船橋市の山手工業地域一帯は,三菱電機の洗濯機などを製造していた日本建鐵船橋製作所,テレビのブラウン管(CRT)を製造していた旭硝子(AGC)船橋工場,耐熱ガラス食器や車のヘッドライトなどを製造していたAGCテクノグラス中山工場(旭テクノグラスから変更)などと,大きい工場が並ぶ. しかし,日本建鐵船橋製作所は洗濯機事業から完全撤退,旭硝子船橋工場も事業所の完全閉鎖,AGCテクノグラス中山工場は2009年3月末で事業所を完全閉鎖予定だ.
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特に,2004年3月に閉鎖された旭硝子船橋工場跡地は,約13万m2もある広大な土地が更地になっている. しかし,旭硝子船橋工場跡地の土壌や地下水からは,環境基準の約7300倍に当たるヒ素が検出された. 約20万tにもおよぶ土壌を,約60億円の費用と3年の月日がかかけて土壌浄化をおこなったのだった.
↓船橋市行田1丁目のAGCテクノグラス中山工場.
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清水建設の土壌浄化工事は,2007年9月末で終了しているが,今その跡地利用が注目されている. 旭硝子船橋工場跡地の一部は,独立行政法人中小企業基盤整備機構が,建設費約7億1000万円をかけてインキュベーション施設(延床面積約2400m2/2階建て)を建設し,すでに2007年夏から稼働している.
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跡地には,大規模ショッピングセンターなどがうわさ(噂)されたが,東武鉄道野田線新船橋駅の反対側の日本建鐵船橋製作所跡地に,大規模なイオンショッピングセンターの建設が決定しており,同じようなショッピングセンターを複数建設すれば,どちらかが潰れるのは確実な状況だ. また,船橋駅前も衰退してしまうだろう. 船橋市としても選択したくない案だ.
↓船橋市山手1丁目のマックスバリュ新船橋店.
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大規模マンションのうわさもあったが,今の不動産不況を考えると,少なくても今後3年間は大規模マンションが埋まるほどの需要はありそうもない. 大規模マンションとなれば,小学校や中学校などの公共施設も新設しなければならない. マンションの建設は,住民税の収入増になるものの,ほとんどが船橋市内からの移動になれば,住民税の増加はあまり見込めない. 船橋市の財政事情を考えると,望まない選択のひとつだ.
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地元からは,大規模公園をとの声も強い. 2006年の路線価が,最も高い場所の価格で1m2当たり15万円だ. この15万円の路線価で旭硝子船橋工場跡地を評価すると,販売可能面積約 11万1000m2 で 166億5000万円にもなる. とても,船橋市が購入できる額ではない. また,近くには大規模な千葉県立行田公園,長津川調整池とその付属の公園,海老川沿いにも大規模な親水公園も含む海老川調整池整備計画もある.
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そんな中,旭硝子船橋工場跡地に大学誘致の話が持ち上がっているようだ. JR山手線内にある有名私立大学が手を上げている. 少子化で18歳人口が減少し,どこの私立大学も学生の獲得に力を入れている. 首都圏においても学科によっては定員割れになっているところも出てきていて,生き残り策としてユニークな学部の新設やキャンパスの再構築,交通の便がよい所への移転などの対策をおこなっている. この私立大学も,2013年に向けて都内のキャンパスの統廃合する計画を持っている.
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に直結できるこれだけの広大な土地は,首都圏ではもう出ないかもしれないほどの貴重なものだ. 東武鉄道野田線の新船橋駅に直結できる大学となれば,学生の確保にも有利だ. 10年ほど前から,環境,人間,文化,バイオ,情報などの名前が付く学部や学科がは大流行だったが,これからは,就職に強い学部や学科が人気になると言われている. ここも,産学連携した技術系の学部になるのではないかと思われる.
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大学移転で参考になるところがある. 東京都新宿区から東京都葛飾区に移転する東京理科大学だ. JR常磐線金町駅近くの三菱製紙中川工場跡地のC街区に,11万m2のうち3万m2を取得し,2012年4月に学生数4000人規模のキャンパスをオープンさせる計画なのだ. 東京都文京区の順天堂大学も手を上げていたが,費用の面で折り合わず断念している.
↓東京都葛飾区の三菱製紙中川工場跡地.
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東京都葛飾区に移転する東京理科大学の総事業費は約350億円で,うち土地取得費として138億円を見込んでいる. 葛飾区も,1万m2分の遊歩道や緑地を作る予定となっている. 東京理科大は,図書館やホールなどの建物も整備するが,建設費を節約するため葛飾区に20年間で総額53億2000万円の補助を求めている. その見返りに,区民に図書館やホールなどの施設を開放する. なお,同じ敷地には,住友不動産の地上38階,高さ約140mのタワーマンションも建設される.
↓船橋市北本町1丁目の旭硝子船橋工場跡地.
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